晦−つきこもり
>三話目(藤村正美)
>G6

そう思うんですのね。
……確かに、少し不思議に思えるかもしれませんわね。
実は私、少し調べてみたんですわ。
浦野医院のあった場所は、何百年も昔、刑場だったそうですの。
あるとき、そこで凶悪な殺人犯の処刑がありました。

犯人は悪びれもせず、処刑を見に来た全ての人々を呪う言葉を残し、死んだそうですわ。
それからすぐに、犯人を処刑した執行人が、原因不明の病で亡くなったそうです。
続いて、町中に熱病が大発生して、住人の半分近くが死んだのですわ。

人々は犯人の呪いだと恐れて、刑場を封鎖したそうですの。
私はこれを、図書館にあった郷土史で知ったんですわ。
どういう関係があるのか……って?
さあ、私にもわかりませんわ。
ただ……死刑にされた犯人は、恋人を切り殺して、その内臓を愛しげに抱いているところを、発見されたそうですの。

…………似ているとは思いません?
いいえ、呪いがまだ続いていたなんていう気は、ありませんわ。
自分の意志ではなく、あんなことをしでかしたとしたら……浦野先生がかわいそうすぎますものね。

武内さんだって、浮かばれませんわ。
二人は、二人にしかわからない愛を貫いて死んだのだと、そう思ってあげましょう。
ねえ、葉子ちゃん。
……私の話は、これで終わりですわ。
次は、どなたが話すのかしら?


       (四話目に続く)