晦−つきこもり
>三話目(前田良夫)
>B6

俺も、そう思った。
だから、素直に「効くわけない」って、いいそうになったんだ。
でも、待てよ。
前のときは、確かに効き目があったよな。
これも本物かもしれない。
だんだん、そんな気がしてきちゃってさ。

何となく、買ってもいいかなって思ったんだ。
だから、値段を聞いてみた。

オヤジはニヤッと笑って答えたんだ。
「ちょうど千円。これ以上はまけられないね」
千円っていったら大金だぜ?
そのときだって、ギリギリしか持ってなかったしさ。
でも、どうしても欲しくなってた。

何となく、絶対に効くって気がしてさ。
だから……買っちゃったんだよな。
何か、いいことがあったかって?
…………うるさいな!
まだだよ。

でも、だからって、だまされたとは限らないじゃん。
今日、効き目が現れる可能性だってあるんだ。
だって、開かずの間に入っちゃったんだから、何か起きるかもしれないだろ。
悪霊とかに襲われるかもな。

そのとき助かるのは、きっと俺だけだぞ。
幸運の人形がない奴は、悪霊に殺されちゃうんだからな!
今のうちに笑っておけばいいよ。
もう、話を終わるからな!
次の奴、さっさとしゃべれよ。


       (四話目に続く)