晦−つきこもり
>三話目(前田良夫)
>H3

……あ、そう?
へぇ、葉子ネエって、そういう性格だったわけ?
俺は、モロ怪しいと思うけど。
こんなことに金使うなんて、ばかばかしいよな。
だから俺、いってやったわけ。
「悪いけど、今日はいいや」
「そうかい。じゃあ今度にしよう」

オヤジは残念そうだったけど、あっさり引き下がったよ。
それで、俺は家に帰ったの。
次の日になったら、もうオヤジはいなかった。
いつもそうなんだ。
たった一日、しかも日が暮れるまでしかいなくてさ。

だから俺たち、謎オヤジって呼んでたんだ。
それからしばらくして、またオヤジが現れた。
今度は、透明な水槽を並べてたよ。
俺を見ると、ニカッと笑ってこういうんだ。

「幸運を呼ぶカブト虫は、いらないかい?」
…………なんだ、そりゃ。
アクセサリーならわかるけど、昆虫が幸運を運んでくれるって、どういう意味なんだ?
「カブト虫が、どうやって幸運を運んでくれるわけ?」

「それは企業秘密だな。自分で買って、調べてくれないと」
オヤジはそんなことをいって、ニヤニヤしてるんだ。
なんだかむかつくよな。
1.別にむかつかない
2.嫌な奴だと思う