晦−つきこもり
>四話目(真田泰明)
>H12

僕は倉庫に入った。
ここはあの悲鳴が録音されていたテープのあった倉庫だ。
(いったい、あの悲鳴は何なんだ………)
倉庫にあった椅子に僕は座る。
そしてあのテープに録音されていた悲鳴について考えた。

しかしあの古ぼけたテープが何なのかは、想像もできなかった。
僕はあのテープのあった棚の所まで行く。
そこには古いテープが幾つも並んでいた。
ここのテープは最近では使われることは殆どない。

(ほ、ほかにも何かあるのか………)
僕は漠然とそう思った。
しかし何の抵抗もする気が起きなかったんだ。
僕は呆然として椅子に戻ろうとした。
(ん………)
あのとき悲鳴のテープから、無意識にはがしたラベルだ。

僕はそれを拾って見た。
変色している。
ここにあるテープの中でもかなり古いようだ。
(な、なんだ………)
ラベルに何か書いてあった。
「そ、そうか! そうだったのか!」

次の日、北田君は出社した同僚に発見された。
あの夜、あのビルに残っていた奴はみんな死体で発見されたんだ。
えっ、どうしてあの夜のことを知っているかって?
それは北田君があの夜、テレコのスイッチを入れていたんだよ、歩き回っている間。

それに今までの話した出来事が記録してあったんだ。
ああ、あのラベルかい。
北田君の血に染まって、何が書いてあったのかわからなかった。
あの事件は結局、謎のまま終わったんだ。
まあ、俺の話はこれで終わりにするよ。

じゃあ、次の人の番だな。


       (五話目に続く)