晦−つきこもり
>四話目(鈴木由香里)
>G8
「そんな……!!」
由香里姉さんたら、ひどいわ。
人の物を欲しがるほど子供じゃないもん。
「欲しくないんならいいの。それに、見せるわけにもいかないしね」
「どうして……?」
「知らないの? 御守りって、中身を見たら効力がなくなっちゃうんだよ」
そうなんだ……、知らなかった。
「じゃ、これで、私の話はおしまい……」
そういって、由香里姉さんが御守り袋をポケットにしまおうとした、その時……!!
御守り袋のほころびから、石のかけらのような物が転がり落ちたの!
「あっ……!」
由香里姉さんは、慌ててそれを拾い、急いで元の袋にしまったわ。
そして、その上から更にハンカチでくるんでいく……。
「大丈夫よね。ほんの一瞬のことだったし、大丈夫よね……」
まるで、自分自身に言い聞かせるように呟きながら、由香里姉さんはそれをポケットにしまったの。
そして、大きく深呼吸すると、落ち着いた声であらためてこういったわ。
「これで私の話はおしまい。次へ行ってくれる?」
(五話目に続く)