晦−つきこもり
>四話目(鈴木由香里)
>N6

「そんなの嘘よ」
私は、笑いたい気持ちを必死に押さえながらそういったの。
由香里姉さんたら、不幸の手紙なんて信じちゃってるんだ。
どっちかっていうと、馬鹿にしてるタイプかと思ってたのに……。
案外、かわいいんだ。

「嘘かぁ……。だったらいいんだけどさぁ」
由香里姉さんは、怪しく目を光らせながらそういったの。
「ゆ、由香里姉さん……!?」
「駄目だよ、葉子ちゃん……。
昔からの伝統はきちんと守らないとね……」
そういったのは、泰明さんだ。

いったい、どうしたっていうの?
みんな、目をランランと輝かせて私を見てる……。
「葉子ネエ……。不幸の手紙を止めちゃったんだろ?」

「葉子ちゃんが、そんなことをするなんて……。とても恐ろしいことですわ」
ジリジリと迫ってくるみんなの視線に圧迫されて、私は蛇に睨まれたカエルのように、目をそらすことすらできない。
不幸の手紙を止めたのが、そんなに悪いことだっていうの!?

そして、哲夫おじさんが巨大なナイフを振りかざして……。
「手紙を止めた者に、不幸を……!!」
最後に、私の目に映ったのは……。
鏡のように磨かれたナイフに映る、恐怖に歪んだ私の顔だった…………。


すべては闇の中に…
              終