晦−つきこもり
>四話目(藤村正美)
>A4

まあ、いけませんわ。
心は広く持たなくては。
本当に、できるだけ寛大でいた方がいいですわよ。
私のように、患者さんに尽くそうと思っている人間だって、限界を越えてしまうんですもの。
そのつもりがない人間なんて、もっと簡単に怒り出すんじゃないかしら。

気をつけないと、いけませんわ。
わかりますわね?
あら、何ですの。
私が何をしたのか……ですって?
大したことじゃありませんわ。
ただ、あんまり患者さんが、わがままなものだから。

寝ているときが、唯一静かなときだなんて、あんまりじゃありませんこと。
ずっと眠っていてほしいと思っても、しょうがないですわよね。
うふふ……そんなに難しいことじゃありませんでした。
寝ているところに、枕を押しつけただけですもの。

少しは抵抗されましたわよ。
だけど、所詮は病人ですものね。
完全に呼吸が止まってから、担当医を呼びました。
もともと心臓が弱い人だったので、発作だろうといわれましたわ。

それで、すべておしまいというわけです。
簡単でしょう、うふふ。

……あら、何の話だったかしら。
……………………………………… 。
……………………………………… 。
……………………………………… 。
まあ、いいですわよね。

私はもう、話し疲れてしまったわ。
これで終わらせていただいても、構わないでしょう?
さあ、次の方の番よ……うふふ。


       (五話目に続く)