晦−つきこもり
>四話目(藤村正美)
>G7

幽霊……だったら、まだよかったんですわ。
おかしなことをいうと思います?
なぜだか、教えてあげますわ。
彼の正体は、座敷わらしだったんですの。

信じられます?
最新設備の整った大病院に、座敷わらしがいるなんて。
けれど、後でもう一度見に行ったら、突き当たりにあったはずのドアが、なくなっているんです。
それを見たら、信じないわけにはいきませんでしたわ。

なんでも、彼がいるうちは、病院が繁盛するらしいんです。
しかも、重病人の回復が早いということで、病院側としては風間様々……というところでしょうね。
その代わり、ときどき悪戯をするというのですけれど……。

私の見た『あれ』は、悪戯なんて可愛らしいものではありませんわよ。
……もう一つ、問題があるんです。
実は私、院長先生に呼び出されて、いわれたのですわ。
「風間が君を気に入ったのなら、何としてでも、この病院に彼を引き留めたまえ。彼がいる限り、うちは安泰なんだから」

……って。
看護婦の私が、面と向かって『嫌だ』といえるわけ、ありません。
考えると、憂鬱になるんですわ。
今度、彼に会ってデートに誘われたら、断れないですものね。

ほんとうに、どうしたらいいんでしょう…………。
これで、話を終わりますわね。
後は次の方に、おまかせしますわ。


       (五話目に続く)