晦−つきこもり
>四話目(藤村正美)
>I7

そうなんですの。
何でも、性格に問題があるからということで、患者の前には出さないんだとか。
クビにならないのは、うちの病院の七不思議の一つだとまで、いわれているそうです。

一説には、手術の腕は超一流なので、ここ一番というときには、なくてはならない存在だともいわれているらしいですわ。
反対に、院長先生の弱みを握って、無理矢理に居座っているという人もいました。

……実際のところ、風間先生の正体は、私にはわかりませんの。
でも、あんな医師が存在するなんて……。
私には、オバケや幽霊なんかより、よっぽど怖い話に思えますわ。

だから、これを私の話にしても、よろしいですわよね。
それにしても、また風間さんですのね。
私も今、気づいたんですけれど。
みなさん、風間さんという方と、何か深い因縁のようなものがあるのかしら?
……いいえ、気のせいですわね。

風間という名字は、ありふれてはいないけれど、それほど珍しくもありませんもの。
偶然に決まっていますわ。
それでは、次の方にお願いしましょうか。


       (五話目に続く)