晦−つきこもり
>五話目(前田和子)
>C15

「和子おばさん、これで終わりにするのは惜しいですよ。風間さんって、なかなか話し上手な方じゃないですか。もっと質問しましょうよ」
うーん。
私って、ひねくれてるのかもしれない。

「……いいけど。それよりまず、私の質問に答えてよ。風間さんは、私のことが好きかどうか」
「えーっと、そうですねえ。それは最後にお話ししましょう。他の質問をもっとしてくださいよ」
「そうねえ……じゃあ、彼の初恋について聞こうかしら」

「そうしましょう。そうしましょう」
そうして、長い時間が流れた。
和子おばさんは次々と質問をだし、私はそれに一つ一つ答える。
「あの、そろそろ私寝ます」
まわりにいた人達は、次第に部屋から出ていった。
つまらなそうな顔をして……。

気がつくと、和子おばさんと私の二人きりになってしまった。
「じゃあ、次の質問よ」
和子おばさんは、質問し続ける。
(ふふ、楽しい夜だね……)
風間さんの生霊は、この状況を楽しんでいる。

……どうしてこんなことになったのかしら。
私は後悔しながら、風間さんの言葉を伝言し続けた。
そうして、いつのまにか眠ってしまったらしい。
……気が付くと、朝になっていた。

朝の光が差し込む。
なんだか向こうの部屋が騒がしい。
バタバタと、誰かが駆けてくる音がした。
「大変! 風間さんが、昨日の夜に亡くなったって!!」
あ、和子おばさん……。

「葉子ちゃん、風間さんが……」
ああ、亡くなったの?
やっぱり、生霊に質問し続けたのがまずかったのね。
和子おばさんは、真っ赤な目に涙をためている。
……って、ちょっと待ってよ。

よく考えたら、これって殺人じゃない?
私が余計なことをしたから、風間さんが死んじゃったの……?
それから、私は毎晩風間さんの夢を見るようになった。
彼は、私をとても恨んでいる。

「僕は君の子供に転生するからね。そうして、生まれてから恨みをはらすよ」
そういい、夢枕に立つ。
生まれてから恨みをはらすって……何をするつもりなの?
「僕は、ぜったい君の子供に転生するよ」
私は毎晩、枕を涙で濡らす……。


すべては闇の中に…
              終