晦−つきこもり
>五話目(鈴木由香里)
>A4

「やっぱ、そう思う? あの時、私も聞いちゃったからなぁ。あのチリーンて音」
そういって由香里姉さんは、ゾクッとするような笑みを浮かべたの。
「実はさぁ、私の身体、かなり溶け始めてるのよ。見えないところからだんだんとね。もうそろそろ、顔も溶け始めるんじゃないかなぁ?」

「由香里姉さん……?」
その時……!
チリーン……、チリーン…………。
これは鈴の音……?
ううん違う、これは……。
「風が出てきたようだね。季節外れの風鈴ていうのも、なかなか風流でしょ?」

チリーン……、チリーン…………。
やだ! 顔が、手足がムズムズする!
もしかして、由香里姉さん……!?

「例の話を聞いた後、チリーンという音を聞く。これで葉子たちも、私と同じ立場になったってわけ。
可哀想だけど、私と一緒に死んでくれる? 勘違いしないで。別に一人で死ぬのが嫌なわけじゃないんだ。なんとなく悔しくってさぁ。私、死ぬ前に、一度でいいから人を殺してみたかったんだ」

なんて人なの……!
由香里姉さんたらひどい!!
ひどすぎる!!
身体が熱いよぉ。
目の前が白い煙で霞んでく……。
隣にいる泰明さんさえ見えない。

チリーン……。
こんなところで死んじゃうの……?
私、もうすぐ高校生だったのに。
チリーン……、チリーン…………。
まだ一度も、制服……着てな…………いの……に……。

チリーン……、チリーン…………。
……おばあちゃんが呼んでる…………。


すべては闇の中に…
              終