晦−つきこもり
>五話目(鈴木由香里)
>G5

海外かぁ。
それはまた、贅沢な意見だね。
ハワイあたりの教会を想像してるんだろうけど、乙女チックなこと考えてるんだね。
最近の中学生って、みんな、そうなの?
芸能人の影響かなぁ。

まぁ、私の式じゃないから、口を挟む気はないけどさ。
もし、海外で式を挙げるんなら、その時は、ちゃんと飛行機のチケットと、ホテルの宿泊費を送ってくれる?
もちろん、呼んでくれるんだよね。

可愛い葉子の結婚式だもん、ぜひ出席させてもらわなきゃ。
大丈夫、たとえ自分の結婚式とぶつかってたって、そっちを優先するよ。
岡本さんの時は、パスしちゃったからさ。
ちょうどその頃、新しいバイトを始めたばかりで忙しかったんだ。

だから、まぁ、悪いとは思ったんだけど、断ったのさ。
するとさぁ、何日かたった頃、また葉書が届いたの。
ウエディングドレス姿の岡本さんが、旦那さんらしい男の人と並んで写った写真が印刷されてた。
その旦那さん、笑っちゃうほど骸骨そっくりの顔だったんだ。

本当に、岡本さん好みの顔だった。
写真の中の二人は、本当にお似合いで幸せそうだったよ。
でもね、この話はこれだけで終わらなかった。
博物館の倉庫から、人骨が一体分消えちゃったっていう噂を耳にしたんだ。

岡本さんの調査した、あの骸骨よ。
その消えたっていう時期が、ちょうど、岡本さんの結婚が決まったっていう時期と重なるんだよね。
これって、どういうことなのかなぁ?

岡本さんの想いが通じたんなら、素敵なんだけどさ。
あんまりにも乙女チックな発想なんで、私自身笑っちゃうね。
それでも、彼女が幸せなら、それでいいんじゃん?
神様か悪魔かは知らないけれど、女の子の味方はちゃーんと存在するってことだよ。

神話にも、似たような話があったっけ?
よくある奇跡って、わけじゃないんだろうけど、葉子も希望を持ちなよ。
たとえ恋の相手が石でも、花でも、人形でも、幸せな結婚ができるかもしれないんだからさ。

それじゃあ、次の話へ行こうか。
それにしても奇妙な事件て多いんだね。
私の話だって、怖くはなかったかもしれないけど、けっこう不思議な話だったでしょ?
次はどんな話かなぁ?


       (六話目に続く)