晦−つきこもり
>五話目(鈴木由香里)
>M9

これほどいっても信じないなんて ……………………………………… …………………………………。
さすが葉子だ。
なんでもかんでも、信じればいいってものじゃないんだよ。

素直な人ほど、騙されやすいっていうじゃん?
この話は一つのテストだったのさ。
葉子が、ちゃんと自分の意見を持っているか。
他人の意見に流されずにいるかっていうね。

確かに、岡本さんていう骨が好きな友達はいるよ。
彼女はちゃんと生きてるし、ついこの前、結婚式を挙げたばかりで幸せ一杯なんだ。
つまり、ミイラは全部、私の作り話。
子供騙しな話じゃん。

普段は冷静な人でも、こういう限られた空間や宗教的な場所だと、暗示にかかりやすくなるってことよ。
洗脳とまではいかなくっても、迷信を信じこませることや、幻覚を見せることぐらいはできるんだって。

人間の脳や記憶って、案外いいかげんなんだからさ。
そういう時って、強い精神力が物をいうからね。
人の意見に流されないことが大事なんだよ。
でも、そんな心配は必要なかったみたいだね。

葉子が、思いのほかしっかりしてるんで感心したよ。
これなら何が起こっても大丈夫だね。
今までは、子供だからと思っていろいろ我慢してたけど、今度からは、思いっきりいかせてもらうよ。

容赦しないから覚悟しといてね。
それじゃあ、次の話へ行こうか。


       (六話目に続く)