晦−つきこもり
>五話目(前田良夫)
>C6

だよな。
だから、成田もムカッと来たんだよ。
それで起き上がって、ドアをバッと開けた。
「うるせーよ、俺は眠いだけだよっ!!」
……って叫んだヤツを見て、母親が口に両手を当てたんだ。

「あんた、それは!?」
息を飲んだみたいな表情。
成田の顔を見てるみたいだ。
あわててヤツが押さえてみると、何だかデコボコしてるじゃないか。
何だこれ……っていおうとしたら、声が出ない。
いきなり、のどに何か詰まったみたいなんだ。

それといっしょに、腕や顔がムズムズしてきてさ。
かきむしろうと、肌に爪を立てたんだって。
そしたら……。
ずるっと、皮膚がむけ落ちたんだ。
その下には、二、三ミリくらいの大きさの白くて丸いものが、びっしりと生えてた!

オバケ販売機の、缶から出てきた丸いものの、ミニチュア版みたいだったって。
成田は驚いたけど、むずがゆさには勝てない。
腕や体や、そこいら中をかきむしったんだ。
爪で引っかくと、なんの抵抗もなく、皮膚がズルズルむける。

成田の全身は、いつの間にか、白い丸いものに覆われてたんだよ。
爪が引っかかって、丸いものの皮を破っちゃった。
そしたらプシュッて音がして、粉が飛び散ったんだ。
「き、きのこっ!?」
母親が、悲鳴みたいな声で叫んだ。

成田の皮膚の下に生えてたのは、白いきのこだったんだよ!!
そうしてる間にも、かゆみはどんどん、ひどくなってく。
成田がバリバリかくと、小さなきのこがつぶれて、白い粉が舞い上がった。
ヤツが気づいたときには、もう遅かったんだよ。

物音に振り向いたら、母親が廊下に倒れてたんだ。
目を固くつぶって、胸を大きく上下に動かしてさ、眠ってるんだよ。
きっと、きのこの粉を吸ったからだ!
そういえば、成田が眠くなったのも、缶から出た粉を吸っちゃってからだったもんな。

このままじゃあ、自分も母親も、どうなるかわかんない。
成田はかゆいのをガマンして、必死に頭を働かしたんだよ。
葉子ネエだったら、まず初めにどうする?
1.白い粉を片づける
2.オバケ販売機へ行ってみる