晦−つきこもり >五話目(前田良夫) >R9
「……いいえ、大丈夫です」 私は答えた。 「私のことは気にしないで、話を続けましょうよ」 「葉子ネエ、ホントに 大丈夫なのか?」 眉をひそめた良夫が、不安げな声で聞いてくる。 いやだ、そんな顔しないでよ。 私が好きなのは、泰明さんなんだから……。 赤くなった顔をごまかすように、私はあえて明るい声を出した。 「さあ、次の話を聞きましょうよ!」 (六話目に続く)