晦−つきこもり
>五話目(前田良夫)
>U7

そう、由香里ってんだよ。
由香里ネエ、ビックリした?
でもホントだもん、しょうがないよな。
で、その由香里の顔見て、成田は気が抜けちゃったんだって。

「何だ、おまえかよ」
「何だとは何よ。成田君こそ、こんなところで何して……」
いいかけた由香里のシャツが、突然スパッと切れた。
続いて、ビックリした成田のほっぺたもピッと切れて、血が飛んだんだ。

「わああっ!」
何だかわからなくて、しゃがみ込んだ二人の体に、次々と傷ができるんだって。
そのたびに、真っ赤な血が飛び散ってさあ。
腕も、顔も、背中も、あっという間に傷だらけになっちゃった。

怖くて、成田は思わず立ち上がって駆け出したんだって。
同級生の由香里を置き去りにしてさ。
でも五メートルも行かないうちに、首筋からブワッと血が吹き出した。
見えない刃が、成田の首を貫いたんだ。

…………次の日になって、成田と由香里の死体が見つかった。
体中が傷だらけで、血なんか一滴も残ってなかったっていうぜ。
何か偉い先生が、カマイタチだろうっていったんだけど……。
オバケ販売機の前だけ、何回も何回もカマイタチが発生するなんてこと、あるのかよ。

俺はやっぱ、ドクロのたたりって気がするんだけどな。
それから、ドクロジュースの缶は、どこにも見当たんなかったらしいよ。
これで俺の話は終わり。
由香里ネエ、そんなムッとすんなってば。
えーと、六人目は誰だっけ。


       (六話目に続く)