晦−つきこもり
>六話目(山崎哲夫)
>A11

いや、違う!!
自分は、また踊ってみたんだ!
「ン、ンバ?」
ンバンバ族は、首をかしげていた。
このまま逃げようかとも思ったよ。
だが、同じ手は使えない。

自分はそこでさらに意表をつき、みずからの腕に噛み付いてみたんだよ!!
それこそ、血が出るまでな。
「ンバッ!?」
ンバンバ族は、さらにひるんだ。
思うつぼだったよ。

自分は、さらに激しく踊りながら、奇妙な行動をとり続けたんだ。
ンバンバ族は、後ずさりした。
今だ!!
自分は、ンバンバ族を突き飛ばして駆け出した。
……そうして、どのくらい走っただろう。

すっかり日が暮れた頃、キャンプをしていた湖までたどりついたんだ。
一息ついてコーヒーを飲み、それまでに起こったことを思いかえしてみた。
風に揺れる木や湖を見ていると、あれは夢だったのではないかと思えてならなかったよ。

まあ、夢のはずがなかったんだけどな。
湖の向こうには、あいかわらずキリンの首……伝説の恐竜のような塔が見えていたんだから。
次の日、その塔の姿は消えていた。
どうやら、向こうの天気や霧のかげんで、見えたり見えなかったりするらしいな。

自分は、予定より早くジャングルを去ったんだ。
ミステリー雑誌には、このことをレポートにして出したよ。
実は、信じてもらえなかったんだけどな。

記事を見たら、しっかりあの塔の写真が載っててな。
『ついに激写!! これが伝説の恐竜だ!!』
なんて見出しがついていたよ。
ははは、おかしいだろう。

……あれ?
怖い話をしていたんだよな。
おもしろくちゃ駄目か。
がっははは、すまんなあ。

まあ、いいじゃないか。
おじさんがンバンバ族に襲われたところは、怖かったろう?
手に汗を握っただろ?
な、自分は汗びっしょりだよ。
葉子ちゃん、冒険っていうのはいいものだよ。
まあ、時々危険なことがあるけどな。

これで自分の話は終わりだよ。
さあ、みんな。
これからどうしようか……?


       (七話目に続く)