晦−つきこもり
>六話目(山崎哲夫)
>B11

うっ、よくわかったな。
また踊れば逃げられるかと思って、そうしてみたんだよ。
でも、駄目だったんだ!!
二度も同じ手は通じなかった。
相手は、全然驚かなかったんだよ!!
自分は絶望したよ。

ンバンバ族は、再び自分を捕らえた。
そして、またあの神殿に連れていったんだ。
そしたらなんと、神殿が燃えていたんだよ!!
大釜を放っておいたのが原因だったんだろう。

「ンバ……!」
ンバンバ族は、ひるんでいた。
チャンスだったんだよ!
自分は、一気に駆け出した。
……神殿の中にな。
そう、方向を間違えてしまったんだよ!!
慌てていたからなあ。

人間ってのは、難しいもんだ。
極限状態になると、体がうまく動かなくなってしまうんだから。
急いで逆戻りしようとしたら、ンバンバ族が輪になって自分を見つめていた。
絶体絶命だ。
戻ることは許されなかった。

自分は意を決して、燃えさかる神殿に向かったんだ。
後ろにいたンバンバ族は、神殿の中までは追いかけてこなかったよ。
だが、神殿に入ると、すぐに別のンバンバ族の影が見えたんだ。
ベールの中にいた、ンバンバ族の長だったんだよ。

戦うしかないのか!
自分は身構えたよ。
「ンバーッ!!」
長は、ヤリを突き出してきた。
自分は避けたよ。
すると、長はバランスを崩し、倒れ込んだ。
今だ!!

自分は、隙をついて逃げ出そうとした。
その時だよ!!
神殿の柱が、崩れ落ちてきたんだ!!
間一髪だった。
もう少しで下敷きになるところだったんだ。

轟音がして、柱が落ちた。
そして、同時に長の絶叫が……!
偶然にも、柱は長の首を直撃していたんだよ。
長の首は、柱に挟まれて切れ、ごろりと転がったんだ。
……自分は、その首を掴んだ。

ンバンバ族の長のものだからな。
これを持って出れば、誰も手出しはできないだろうと思ったんだ。
気持ち悪かったよ。
その首は、死んだ時の顔のまま、硬直していたからね。

「ンバ……!」
外にいたンバンバ族は、長の首を見ると、短く叫んで黙りこんだ。
もう、自分に手出しをしようとする者はいなかったよ。
自分は、ンバンバ族の間を、ゆっくりと歩いた。

そうして、その場を去ったんだ……。
自分は、キャンプをしていた湖までたどり着いた。
ンバンバ族の神殿が、遠くで崩れ落ちていくのが見えたよ。
彼等は、あれからどうなったんだろう。

新しい長をたてて、今も尚戦闘しているんだろうか。
自分にはわからない。
ただ、これだけはいえるよ。
あの湖に伝説の恐竜の話題が出ることは、もうないだろうってな。
いやあ、しかし、生きて帰ってこれてよかったよ。

こうして怖い話ができるのも、命あってのことだもんな。
さあ、自分の話はこれで終わりだよ。
これからどうしようか。
みんな、そろそろ眠くなってきたんじゃないのかな……?


       (七話目に続く)