晦−つきこもり
>六話目(山崎哲夫)
>F10

ええっ、もしかして怖くないの?
あっ、そうか、いい忘れてた。
ンバンバ族の神像……石なんだけどな。
裁判から逃げた後、キャンプをしていた湖に、置いて帰ったはずだったんだ。

だが……なぜか、帰国してから荷物の整理をしていた時だ。
自分のザックから、ポロリと出てきたんだよ。
それだけじゃないぞ。
あの石は、自分が行くところに、常についてくるようになったんだ。

疑ってるな?
嘘じゃないぞ。
その証拠に、ここにも来ているはずだ。
自分の荷物の中か……ポケットの中かもしれない。
あの石は、いつもいつも、いつのまにか自分の近くにいるんだよ。

まあ、それを見せてあげるわけにはいかないんだが。
あ、本当に疑っているだろう。
見せないのは、はったりだからじゃないよ。
こんな石を見せたら、危ないからだ。
こいつは呪われているよ。

間違いない。
でも、手放せないんだよ。
捨てても捨てても、自分の元に戻ってくるんだからな。
さあ、これで自分の話は終わりだ。
これからどうしようか。
そろそろみんな、眠くなってきたんじゃないか?

今何時だろう?
かなり、遅くなっていると思うんだがな……。


       (七話目に続く)