晦−つきこもり
>六話目(山崎哲夫)
>I12

「ええっ、葉子ちゃん、冗談だろ」
哲夫おじさん、慌ててる。
冗談なんかじゃないわ。
「そんな危険な石、持ってちゃいけないって思うんです」
「……うーん、そうか、わかった。
じゃあ、ちょっと来てくれないか?」

哲夫おじさんは、しばらく考えこんでから立ち上がった。
「どこにですか?」
「いいから、ちょっと」
何かしら。
とりあえず、私は後を追った。
「あっ、どこに行くのよ?」
和子おばさんに軽く会釈し、部屋を出る。

哲夫おじさんは、廊下をゆっくりと進んでいった。
「どこまで行くんですか? ……あっ」
台所だわ。

「葉子ちゃん、困るなあ。この石を壊そうなんて。これは、大切な神さまなんだよ?」
……哲夫おじさん?
どうしたの?
目付きが変だわ。
哲夫おじさんは、流しのところから包丁を取り出した。

「いやあ、自分は一度、試してみたかったんだよ。人間の首って、本当に干すと小さくなるのかなあ」
「哲夫おじさ……ぐがっ!」
石の魔力がそうさせたのか。
哲夫おじさんは、私の首をめがけて何度も切り付けた。
一体どうしてこんなことに……。
私は、血だらけの床に力なく倒れこんだ……。


すべては闇の中に…
              終