晦−つきこもり
>六話目(鈴木由香里)
>E6
「あはははは……、はははははははは…………」
おっかしー! イボガエルだって。
笑っちゃうわ。
「あはは……」
ヤダ、笑い過ぎて涙まで出てきちゃった。
みんなも笑っちゃうでしょ?
だって、イボガエルよ! イ・ボ・ガ・エ・ル!
アー、駄目!
ちょっと考えただけでも、おかしくって……!!
「あはは……、はっははっははっははははは、ははははははは……」
ちょっ……、ど、どうしよう?
笑い過ぎて呼吸ができないわ。
「あははっは……」
でも、なかなか止まらない……。
ああっ! もう、く……苦しい……!!
「葉子ちゃん。女の子が、そんなに大口を開けて笑うものではありませんわよ」
……ち、違うのよ、正美おばさん!
「あらあら、いいじゃないの?
ほら、よくいうじゃない。ええと……、なんだったかしら?」
「はしが転げてもおかしい年頃……ってやつかい?」
……泰明さんまで、そんなこといって…………。
「橋が転がったら大変だよな。
川を渡れなくなってしまうものな」
ああ、哲夫おじさんったら……。
その『はし』じゃないでしょ!
……って、私が突っ込みを入れちゃ駄目じゃない。
「あはっはっははは」
ほら、変なシャレ聞いちゃったから、また笑いが止まらなくなっちゃった。
「葉子ネエぐらいだよな。こんなダジャレで笑う奴……」
「ひどいなぁ、良夫君は……」
みんな、違うのよ!
笑いたくて、笑ってるんじゃないの!
苦しくって、死にそうなんだからーーー!!
「でも、気を付けないとね。笑い過ぎて死ぬこともあるっていうじゃん」
…………ひくっ。
一瞬、私の背筋がぞくっとしたわ。
由香里姉さんの言葉が、深く心に突き刺さったって感じ。
そのおかげかしら?
あんなに止まらなかった笑いが、ぴたっと治まったの。
「ありがとう! 由香里姉さん」
今度は、嬉しくって涙が出てきちゃった。
「どうしたの、葉子? 突然笑い出したかと思えば、今度は泣いたりして……。
熱でもあるんじゃん?」
いいの、今は何をいわれたって……。
だって、由香里姉さんは私の命の恩人なんだもん。
「……ま、ちょっと気味悪いけど、とにかく話を続けるよ」
うんうん。
もう何だって聞いちゃう。
「ええと、どこまで話したっけ……? そうそう、『イボガエルの間』の……」
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……………………………これは不意打ちだったわ。
助かったと思った後だけ、余計にね。
「あはっははは……、ははははっははっは……」
……こ、このままじゃ本当に死んじゃう!!
笑い死になんて、恥ずかしくって絶対に嫌ーーーっ!
なのに……、なのに……。
「イボガエルの間かぁ……。なかなかいいネーミングだな、ははっ」
………………泰明さん。
とどめ刺すなんて……、ひどいよ…………。
すべては闇の中に…
終