晦−つきこもり
>六話目(鈴木由香里)
>H12

「由香里姉さん、結婚おめでとう!」
私は、できるだけ明るくいったのよ。
場が盛り上がるように……。
すると、由香里姉さんはにっこりと微笑んでこう答えたんだ。

「馬鹿ね、葉子。花嫁に立候補したからって、すぐに結婚できるわけないじゃん。第一、あんた、相手の返事も聞かずに何いってんのよ」
あ、そうか……。
そんな大事なこと、忘れてたわ。

……でも、『フラれちゃってたら……』なんて場合を考えちゃうと、なんだか聞きにくくなっちゃった。

私があれこれと考え込んでると、由香里姉さんはにっこりと微笑んで、スッと左手を上げたの。
その薬指には、キラキラと輝くゴージャスな指輪が……!!
「見て、ステキでしょう? 婚約指輪なの」
あれは何ていう石かしら……?
とっても大きな宝石だわ。

それに、うっとりするような不思議な輝き……。
由香里姉さんのわずかな動きに反応して、色彩が微妙に変化するの。

「実は、これから結婚式なんだ。
もうそろそろ、迎えが来るはずなんだけど……。もちろん、みんなも出席してくれるよね」
そ、そんなこと急にいわれても……。
私たちが、とまどいを隠せないでいると……。

「だって、もう迎えを呼んじゃったんだもん。ほら、来たわ!!」
その瞬間……!
障子の外から、まぶしい光線が差し込んできたの。
あまりのまぶしさに目を開けてられない!
何なの! この光は……!?

障子を開けると、そこには巨大な銀色の物体が…………。
UFO……?
「すげーな、これ本物?」
「もしもし? ああ、真田だけど……。至急カメラ持ってこれないかい? ああ、大スクープなんだ」
妙に楽しそうなのが、良夫と泰明さん。

和子おばさんと哲夫おじさんは、ちょっとおっかなびっくりって感じ……。
「じ、自分は……こういうつるんとした物体はちょっと…………」
……だって。
正美おばさんは、全く興味を示さず行く気も全くないみたいだわ。

私は……というと、興味半分、不安半分ってとこかな?
由香里姉さんは、期待に胸膨らませてるって感じ。
「さあ、みんな行くわよ! 目指すは遥か彼方の大宇宙。スンバラリア星へ!!」
……なんて、すっかり仕切ってるもん。

もう、頭の中ではウエディング・ベルが鳴り響いてるんじゃないのかなぁ?
ところで…………。
私たち、ちゃんと地球に戻ってこれるんだよね?


すべては闇の中に…
              終