晦−つきこもり
>六話目(鈴木由香里)
>N12

絶対に嫌!
そんなこと唱えたくないわ!!
私が、ステキって思ってうっとりするのは泰明さんだけよ。
<そうかい? じゃあ、『泰明さんはステキでうっとりしちゃう』でもいいよ。さあ、大きな声で叫ぶんだ!>
……ええっ!?
そんな、恥ずかしいわ。

………………でも、ちょっとやってみようかな?
<そうだ! さあ、大きな声で!
せーの!!>

「泰明さんはステキでうっとりしちゃーーーーーう!!」
……………………………………… ……………………………………… ……………………………………… ……………………………ハアハア。
こ、こんな感じでよかったのかしら?

<OK、グッドだよ。君、なかなかやるね。これで、ばっちり何かが、お・こ・る>
……何が起こるっていうの?
……なんだか、わくわくしちゃう。
と、その時……!

「葉子! あんた、
人が話してる時になに考えてんのよ!!」
由香里姉さんは、ものすごい形相で私を睨んでる。
他のみんなも、どことなくしらけた感じ……。
ただ、泰明さんだけが苦笑いしてて…………。

「もう知らない! 私、部屋に帰って寝るわ!!」
由香里姉さんは、そういって襖をピシャリと閉めて出ていっちゃった。
……これって、私のせい?
<ほーら、いった通りだろう?
何かがおこった! ふっふっふふふふふ……>

私を、からかうような笑い声が、いつまでもいつまでも頭の中にこだましてた……。


すべては闇の中に…
              終