晦−つきこもり
>六話目(藤村正美)
>V3

戸部さん、ですの。
……………………うふふ。
やっぱり、そうですわよね。
佐原さんも、同じ結論に達したんですのよ。

「戸部さんを、例の個室にして差し上げては?」
佐原さんの言葉に、婦長はハッと息を飲みました。
「で、でも……」
「個室、結構じゃねえか! それとも、俺には個室はもったいないとでもいう気かよ?」
何かいいかけた婦長を、戸部さんの大声がさえぎりました。

「俺は、その個室に入らせてもらうぜ。早いとこ寝ないと、明日もあるんでなあ!」
彼女たちを脅かすように、ぎょろりと目をむくのですわ。
「婦長、戸部さんをご案内しましょう」
佐原さんは静かにそういいました。

「……そうね。お願いします」
婦長も、今度は反対しませんでしたわ。
だから佐原さんは、戸部さんを例のベッドがある個室に、案内して差し上げたのです。

「なんだ、しけた病室だな。まあ、しょうがねえか。うわっはっは!」
戸部さんは笑いながら、佐原さんの目の前で、乱暴にドアを閉めました。
もちろん、お礼の言葉一つありませんでした。
本当に、なんて失礼な人なんでしょう。

そんな人がどうなろうと、構うことなんかありませんわ。
そう思うでしょう?
1.思う
2.思わない