晦−つきこもり
>七話目(前田和子)
>D23

賭けてみるしかない!
私は、手元にあるお札を差し出した。
「よし……逃げるなよ」
和弘さんは、私の腕を掴んだ。
そのまま懐中電灯を拾い、お札を読んだ。
お札に刺さったナイフが痛々しい。
しばらくの沈黙。

どうしたんだろう。
お札には、何て書いてあったの……?
「……お前、嘘をついたな」
和弘さんは、お札を床に置き、私の体を引き寄せた。
首に、力強い手がまわされる。
苦しい……っ。

「俺の隙をついて逃げようとしたんだな? いたずらに人の気持ちをあおって……」
和弘さんの手に、どんどん力がこもる。
抵抗できなかった。
その力が、あまりに強くて……。
『おかあさんをかえして』

ナイフが刺さったお札を見ながら、私は徐々に意識を手放していった……。


すべては闇の中に…
              終