晦−つきこもり
>七話目(山崎哲夫)
>B6

「いいえ、飲みません!」
私は、きっぱりと断わったの。
そんな吸血鬼みたいな真似できないわ。
すると……?
「そうなの? じゃあ、私が葉子ちゃんの血をもらっちゃてもいいのかしら?」
私の、耳元で声がしたの。

振り返ると、そこには和子おばさんが立ってた。
「か、和子おばさん……!?」
「正美ちゃんに聞いたのよ。若さを保つには、若い女の子の血が一番の薬だって……」
和子おばさんは、私を背後から羽交い絞めにすると、大きく口を開けて私の細い首筋に噛付いたの……。

チクッという感触がして……。
首筋から、暖かい液体が流れ出したわ。
そのヌルッとした感触を味わいながら、私の意識は遠くなっていったの……。
「やっぱり、美容にはこれが一番よね」
そういって笑う正美おばさんと、和子おばさんの姿……。

その二人の背後に浮かぶ黒い影……。
それが、私の目に映った最後の光景だった…………。


すべては闇の中に…
              終