晦−つきこもり
>七話目(山崎哲夫)
>H4

うーーーん。
とりあえず起き上がろう。
水を飲みに行くかどうかは、それから考えようっと。
……と、身体を起こそうとした瞬間!
ピキーーーーーン!
か、身体が動かない……!?
どうしたっていうのかしら?

噂でしか聞いたことないけど、もしかして、これが金縛り!?
やっぱり、怖い話なんてするべきじゃなかったの?
それとも、開かずの間を使ったのがいけなかったの?
……なんだか息苦しい。
おそるおそる目を開けると……。

暗い部屋の中に、もぞもぞと動く影のようなものが見えたの。
「あれだけ怖い話をした後に、何も起こらないっていうのはないよね」
……この声は?

「そうだよ。これじゃあ、せっかくのシナリオが台無しだ」
「そうですわね。物語には、悲劇のヒロインが必要ですもの」
……ちょっと待って!
みんな、何をしようとしているの?

「よかったなぁ、葉子ちゃんは前田家の伝説として、永遠に語り伝えられるんだぞ」
「そうよ、開かずの間の伝説と共にね」

「俺、学校に行ったら絶対自慢するからな。『俺の親戚の葉子って女がさぁ、開かずの間で怖い話をした夜にさぁ、突然死んじゃったんだ……』って感じでさぁ……」
……いったい、どうしちゃったっていうの?
泰明さん、どうして笑いながら私の首を絞めるの?

みんなも……。
どうして誰も助けてくれないの?
そんなに、私のこと嫌いだったの……?
「永遠におやすみなさい、私たちのかわいい葉子……」


すべては闇の中に…
              終