晦−つきこもり
>三話目(前田和子)
>A8

……信用しよう。
このことは、誰にもいっちゃいけない。
絵の話が本当なら、私が生きているのは儀式のおかげかもしれないんだから。

「わかりました。……客間に戻りましょう」
良夫は、ほっとしたように私の手を握る力をゆるめた。
私達は、客間に向かって歩き始めた。
由香里姉さんも、後をついてくる。

あそこで剥製になっていたのは、由香里姉さんかもしれなかった。
そう思うと、声がかけられなかった。
「葉子、お互い無事でよかったね」
由香里姉さんは、ニッコリと笑った。

「何暗い顔してんのよ、いいじゃない、助かったんだから」
本気でいってるのかしら。
だったら私も、戻ったら何もなかったように振る舞わなくちゃ。
さあ、次は、誰の話を聞こうか……。


       (四話目に続く)