晦−つきこもり
>七話目(山崎哲夫)
>E4

「なりたい……」
私の返事を聞いて、泰明さんは嬉しそうに笑ったわ。
そして……。

「この石がわかるかい? ほら、みんなの話に出てきた石さ。この六つの石は、もともとは一体の人形だったんだ。俺はみんなの話を聞きながら、ずっとこの石を元の形にする方法を考えていたのさ」
泰明さんたら、子供みたいに目をキラキラと輝かせちゃって。

でも、石が、もともとは人形だったなんてどこで知ったのかしら?

「それで、ある方法を思いついたんだ。これには、ぜひとも葉子ちゃんの協力が必要なんだが……。大丈夫、そう難しいことじゃないよ」
そういった泰明さんの手には、ギラリと光るナイフが握られてる。
その次の瞬間には、ナイフの刃が私の喉を切り裂いてた……。

六つの石が赤く染まっていく……。
遠くなっていく意識の底で、甲高い笑い声を聞いていたわ。
「駄目か…………」
……暗い部屋の中で、泰明が呟いた。
畳の上には、赤く染まった石が転がっているだけ。

「若い女の子の血なら効果があるかと思ったが……。足りないのかな? とりあえず、いろいろ試してみるか。そうだな、次は良夫君の血を使ってみよう。それが駄目でも、まだまだ血はいっぱいあるさ……」
フラフラと部屋を出て行く彼の手の中で、石たちがカタカタと音を立てていた……。


すべては闇の中に…
              終