晦−つきこもり
>七話目(鈴木由香里)
>B6

私の好きな人の話…………?
……………………………………… ……………………………………… ……………………………………… ………じゃなかったわ。
変な人たちが出てくる話ばっかりだった。

名前まで同じで……。
確か、『風間』だったはず。
<大正解!! おめでとう!>
……でも、それで感謝されるってことは……。
もしかして……。
<ふっふっふ。そう! 君の推測通り、僕の名は風間。知的で抜群のセンスと美貌を誇る一族の、次期リーダーとなる男さ>

この声の主が、噂の風間さん……?
<僕の噂だって……? フッ、まいったな。僕は、そんなに有名になってたのか。まだこの星に来て、ほんの数百年しか経っていないっていうのに……。いい男っていうのは辛いな>
………………はぁ?

<さぁ、蘇るのだ我が一族たちよ!
儀式は成された。この者たちと共に仲間を増やし、この地上に、我らの楽園を築くのだ。オー・イッツ・ア・スンバラリア・パラダイス! さぁ、葉子ちゃん。目を開けて周りを見回してごらん。そして心で、僕の存在を感じるんだ>

私は、いわれるままに目を開けたわ。
すると……?
「きゃーーーーーっ!!」
み、みんなが……!
みんなが同じ顔になってる!!
全然知らない、見たこともない男の人の顔……。
みんなはそれに気付いているのかいないのか…………。

一様にニヤニヤ笑いながら、私を見つめてるだけ。
<どうしたんだい、葉子ちゃん?
君が急に大声を出したりするから、同化に失敗しちゃったじゃないか!>
また、あの声だわ。
……だって、みんなが…………。

<何だそんなことに驚いていたのかい? 素晴らしいだろう。これでみんな風間一族の一員さ。だが、僕は君との同化に失敗してしまった。多少容姿が変わってしまった程度だから、まぁ、そんなに気にしなくていいさ>
……ええっ!? 私もなの?

その時、私は、自分の口許に細いヒゲのようなものが生えていることに気付いた。
ヤダ、何これ?
そう思って触ろうとすると、自分の手と一緒にそのヒゲまで動くの。
口の周りを、舐めるように動くそれは、ヒゲじゃなくて緑色の細い触手だった……!!

「MLCDKDKIJSW!!」
私の叫んだ声は、もう私自身が理解できない奇妙な音に……。
ああ……。
もう私には、何がなんだかわからない…………。
<まず、この国を風間国にすることから始めるぞ! それからこの星を風間星に……。一億総風間世代の夜明けだ!>

混乱する頭の奥で、もう一人の私が嬉しそうに叫んでた……。


      (ノーマルエンド)