晦−つきこもり
>五話目(藤村正美)
>C10

……そうですわよね。
いくら性格が悪くても、茜さんの体ですもの。
ミドリちゃんに譲るってわけにはいきませんわよね。
だから私、ミドリちゃんの霊に手をかざしました。
ミドリちゃんは、不安げに弱々しく揺れましたわ。
可憐でしたわよ。

私も、精いっぱいやさしく、いってあげましたの。
「あなたは死ななくてはならないの」
そして、ミドリちゃんは消えてしまったのですわ。
うふふ……。
正美おばさんは、肩をすくめて笑った。

ひやり、と冷たい空気が頬をなでたような気がいた。
おばさん……?
「まあ、葉子ちゃんたら。なんで、そんな顔をして私を見るんですの?
あなただって、ミドリちゃんを消すべきだといったじゃありませんか」

「で、でも……どうやって消したの?」
声が震えてるのに、おばさんは気づいたかしら。
微笑んで、私を見つめてる。
「私は霊を操れる女……そして、自分の力にもできるのですわ」
そういいながら、私の手を握る。

その途端、正美おばさんにまとわりつく、無数の白いモヤが見えた。
ウネウネとのたくって、苦しんでいるの?
よく見ると、顔がついているような気もする。
「きゃあっ!」
私は、おばさんの手を振り払った。

白いモヤのような物が見えなくなる。
今のは、まさか…………!?
「見えたようですわね」
正美おばさんが、吸い込まれるような瞳で私を見つめていた。
やっぱり、あれは霊なの?
おばさんは、霊魂を集めているの!?
いったい、なぜ……。

言葉も出ない私の肩を抱いて、おばさんはみんなを振り向いた。
「さあ、次の話をしましょうか」


       (六話目に続く)