晦−つきこもり
>五話目(藤村正美)
>I7

ええ、私もそう思ったんですの。
だって、あんな性格の悪い方が本物なんて、信じられないですわ。
もしかしたら、無理矢理追い出された茜さんは、困っているのじゃないかしら。
だから私、茜さんの首を絞め上げました。

いいえ、正確にいうなら茜さんの体を、ですわね。
だって、中に入っているのは、ミドリちゃんの魂ですもの。
「何すんの……っ?」
彼女は声を上げかけましたが、のどを押さえられては、大声なんて出ませんわ。
やがて、彼女はぐったりとしました。

その体から、スウッと白い霊体が抜け出しましたわ。
うふふ……誰にでも見えるわけではありません。
私のように、そういう能力があれば別ですけれどね。
霊体の茜さん……いいえ、茜さんの体から出てきたミドリちゃんは、ぐったりしていましたわ。

葉子ちゃんは知らないでしょうけれど、霊体も気を失うんですのよ。
今のうちだと思って、私は霊体の茜ちゃんにいいましたの。
「さあ、今のうちに体にお戻りなさい」
……ってね。
茜ちゃんは、喜んで体に入っていきましたわ。

うふふ、それで終わりですの。
ああ、体を乗っ取ろうとしたミドリちゃんの魂は、私がちゃんと処分しておきましたわ。
どうせ、たまたまとりついただけの、低級霊か何かでしょうからね。
大丈夫、私に間違いはありません。
安心してくださいな、良夫君。

今度会うときは、園部茜さんは、やさしくて明るい、いい子になっていますわよ。
うふふ……。
それでは、私の話を終わりますわ。
次はどなただったかしら?


       (六話目に続く)