学校であった怖い話
>二話目(岩下明美)
>E12

あんた、偉いわね。
振り返れば、彼女の忠告を聞かなかったことになる。
振り落とせば、彼女との約束を破ったことになる。
あんたは、必死に耐えたの。
そう、恐怖で凍りついてしまいそうな心臓をかばいながら、あんたは耐えたわ。

「……長い廊下ねえ。……いつになったら、廊下が終わるのかしら。こんなに長い廊下、学校にあったかしら……」
誰に言うわけでもない彼女の声は闇に紛れ溶けていったわ。
「……何だか、とっても寒いわねえ」

彼女がそう言った途端、
あんたの後ろから冷たい風が吹いてきたわ。
そして、腹の底から絞り出すようなうめき声が、風に乗って聞こえてきたの。

まるで、地獄の亡者たちが、地の底から生ける者を恨み、ののしるような陰湿な声。
それは、風の音かもしれない。
でも風の音ではないかもしれない。

耳元で、また彼女の声がささやいた。
「……怖いだろ? 振り向いてみるかい?
振り向けば、楽になれるよ。もう、怖がらなくてもいいんだよ」
誘うような甘い声。

どうする?
振り向いてみる?
振り向かないと、死んでしまうかもしれない。
1.振り向く
2.振り向かない