学校であった怖い話
>二話目(岩下明美)
>K10

彼は、後ろに戻ったの。
もう一度Uターンしたら、今度こそ状況が変わるかもしれない、そう思ったのよ。
でも、だめだった。
やっぱり目の前に、黒いものがいるの。

彼は、勇気を出して一歩一歩足を踏み出したわ。
勇気というよりも、それは諦めに近かったかもしれない。
相変わらず、廊下の先は見えなかったけれど、その黒いものは、だんだんと近づいてくるのがわかった。
ゆっくりと足を踏み出す歩調に合わせ、そのものは、はっきりと姿を現し始める。

それは、一人の少女だった。
学校の制服を着た女の子が、壁に寄り添うようにして座っていたの。
途端に、今までの恐怖が吹き飛んだわ。
ほっとため息をつき、彼女の元に駆け寄ったの。
一人だと心細いものも、二人だと心強い。

……彼女は泣いていたわ。
顔を覆うようにして、すすり泣く声だけが聞こえていたの。
「どうしたの? こんなところで、何かあったの?」
彼は、声をかけてみたわ。

彼女は顔を覆う手の隙間から、ぎょろりとした目を二つ覗かせ、彼のことを見上げたの。
「……足が、……足が痛くて歩けないの。……だから、休んでいるの。……お願い……助けて」
彼女は途切れ途切れの小さな声で、そう呟いた。
痛む足をかばうようにして、彼女はそっと足を折りまげていた。

こんなところで、たった一人、女の子がいるなんて、不思議だとは思わないかしら?
思うでしょ?
あなた、どうする?
彼女を助けてあげる?
それとも、放っておく?
1.助けてあげる
2.彼女をその場に残して逃げる