学校であった怖い話
>二話目(岩下明美)
>N7

「やっぱり変だよ」
彼は、一人言を呟くと引き返すことにしたの。
何だか、このまま進むのは危ないと感じたのね。
けれど、引き返してみると、いつまでたっても元いた場所に戻れないのよ。

間違いなくさっきよりも長い距離を歩いているはずなのに、いつまでたっても、元いた場所にたどり着けない。
「どうしたんだ、いったい」

彼は、もう一度振り向いたの。
やっぱり廊下は長く続いていた。
前にも後ろにも、ちょうど同じくらいの長い廊下が続いている。
心なしか、さっきよりも蛍光灯の明かりが暗くなっているような気がしたわ。

もう、廊下の先が見えないほどの弱々しい光り。
薄暗い闇の向こうに、何となく階段の気配だけが感じられる。
でも、それもとても頼りない、かすかな気配。

「うわーーーーっ!」
彼は、怖さを紛らわすために大声で叫ぶと走ったわ。
がむしゃらに走ったの。
廊下を走ってはいけない規則など忘れてね。

「いてっ!」
あまりに力みすぎたのか、彼は勢い余って転倒したわ。
「いってぇ……」
幸い、けがはなかった。
ひじとひざを強く打った程度で、何とか立てた。

立ち上がって、もう一度辺りを見回すと……少しも進んだ感じがしない。
どう考えても、長い廊下のちょうど真ん中辺りにいるまま。
正確に言えば、もう両方とも端は闇に包まれて、はっきりとは見えなかったんだけれど。

もう一度、長い廊下の先を目を凝らして、よく見てみたわ。
それでも、薄暗い廊下は決して、闇に包まれたその先を見せてはくれなかった。
けれど、目を凝らしてぎょっとしたの。

暗い闇に包まれて、はっきりとはわからないんだけれど、誰か人の姿が見えたの。
おぼろげながら、黒い影が、壁の辺りにうずくまってモゾモゾと動いていたの。
人のようでもあるし、肉の塊のようにも見える。

どうする?
あなた、逃げる?
それとも……。
1.近寄ってみる
2.逃げる