学校であった怖い話
>二話目(岩下明美)
>R5

そう……。
私、優しいあなたにお願いがあったんだけど……。
あなたに約束してもらいたいことがあったの。
私が今から話す呪いを、解いてちょうだいってね。
でも、あなたは人の忠告は聞けない人なのよね。
だったら、だめかもね。

私の忠告なんて、あなたには聞けないんでしょうから。
でも、話しておくわ。
昔、この学校で起きた事件について。
あなたのクラスは危険よ。
……忠告しておくわ。
それじゃ、話を始めましょう。

昔この学校に、北島なつみっていう女の子がいたの。
彼女には、好きな男の子がいてね。
名前は……なんていったかしら。
思い出せないわ。
そうね、仮に、坂上君って呼ぼうかしら。
あなたの名前を借りるわね。

坂上修一君っていったの。
北島さんは、なかなか告白できなかったわ。
彼女は坂上君と同じクラスだったけれど、遠くから見つめるだけという日々が続いていたの。

そして、ある暑い夏の日……。
彼女は、いつもの様に坂上君を見つめていたの。
坂上君の顔、坂上君の髪、坂上君のシャツから覗く腕……。
彼女は目がすごく良くて、彼の腕を流れる、汗の粒まで見ていたというわ。

そして、そこに一匹の蚊がとまったの。
彼は、蚊を手ではたいたわ。
そして、坂上君の腕には小さな血の跡がついたの。
彼女は、それを見てちょっと変な気分になったわ。

窓の外では、セミがうるさいくらいに鳴いていた。
暑い、暑い夏の日……。
坂上君の血を吸った蚊を見て、彼女は何だかうらやましいと思ってしまったの。

坂上君の腕にとまり、血を吸うことさえできる蚊が、とてもうらやましかった。
自分はこんなに遠くにいるのに、あの蚊は………。
毎日、毎日、何匹もの蚊が彼の腕にとまっていたわ。

彼女は、とても嫌な気分だった。
自分は坂上君に話しかけることさえできないのに、あの蚊は……。
彼女は思いつめ、坂上君の血を吸えるなら、蚊のように殺されてもいいとさえ思うようになってしまったの。

北島さんは、そんな自分がとても恐ろしかった。
そこで、坂上君に告白することにしたの。
勇気をふりしぼって、気持ちを伝えることにしたのよ。
……あなた、どう返事をする?
1.交際する
2.断る