学校であった怖い話
>三話目(新堂誠)
>A2

そうか、お前もスポーツマンか。
俺も、いろいろとかじっててな。
けっこう自信あるんだぜ。
……という話は、まあ、これくらいにしてだ。

スポーツに執念を燃やすのはいいんだけどよ。
あんまり熱中しすぎて、燃やすのが執念じゃなくて怨念にはならないでくれよ。
人間は怨念をもったまま死ぬと地縛霊になるだろ?

その時な、その霊魂は自分がもっとも思い入れの強い場所を選ぶらしいぜ。
恨みや怨念を抱いたまま死ぬケースは、たいていが殺されたり、自殺したりする場合だ。
だから、自分が死んだ場所で地縛霊になったりする。

特に、この世にやり残したことがたくさんあるのに殺されてしまった霊などは、生への執着が捨て切れず、その場を離れられなくなるらしいぜ。
スポーツマンってのは、勝利への執着心が強いだろ?
努力家であればあるほど、それは強いもんなんだ。

だから、もし突然の事故で死んだりしてみろ。
しかも、それが大会の何日か前に死んだりしてみろ。
死んでも死にきれないだろ?
だから地縛霊になっちまうんだよ。

それで、死んだ場所じゃなくて、自分が一生懸命に練習をしていた場所で地縛霊になっちまうんだ。
勉強のしすぎでノイローゼになって死んだ奴が、教室で幽霊になって現れるって話はあんまり聞かないだろ?

それは、勉強が好きで好きで仕方なかったからじゃなくて、逆に嫌で嫌でしょうがなかったからさ。
だから、地縛霊になりようがないんだよな。

その点、体育館や運動場は違う。
そのスポーツに未練を残して死んだ連中が、地縛霊になってしまう可能性は多いからな。
誰もいない運動場で、野球のノックの音がするとか、聞いたことないか?

深夜の体育館で、バスケットボールの弾む音が聞こえるとか、かけ声や応援の声や足音が響いてるって話は、お前も一度くらい耳にしたことがあるだろう?
それは、みんな自分が大好きだったスポーツを忘れられなくて、化けて出てくる地縛霊なのさ。
まあ、かわいそうな話だよな。

自分がのめり込めるものをもっていながら、わずか十数年で、その短い人生に幕を閉じちまったんだからな。
だけどよ、同情は禁物だぜ。
同情すると、霊につけ込まれるからな。
これから俺が話すのは、霊に同情したばっかりにとんでもない目にあった男の話さ。

俺のクラスにバスケ部のキャプテンがいるんだけどな。
うちのバスケ部には、ある言い伝えがあるんだ。
今でこそバスケット・ボールは人気のあるスポーツだけどよ。
十年くらい前は部員を集めるのもひと苦労だったんだよ。

そのころ、田所芳樹って男がキャプテンをしていてな。
その年も、あまりいい新人が見つからず、戦力強化に悩んでいたんだ。
何とかして、全国大会をめざしたかった田所は、必死だった。

その時、陸上部に鳴り物入りで入ってきた新人がいた。
名前を川口っていってな。
中学では結構注目された短距離走のランナーだったんだ。
田所が目をつけたのは、川口の身長でな。
百八十五センチもあったのさ。
ちょっとすごいだろ?

短距離走の選手だから、瞬発力はあったし、幅飛びでもかなりの成績を残していたので、跳躍力にも優れていた。
戦力強化には、もってこいの人材だったのさ。
それで、何としてでも川口を手に入れようとしたんだ。

だけどよ、それを陸上部が黙って放っておくわけはないだろ?
そもそもが、陸上部の期待のエースなんだ。
それを、バスケ部に横取りされるなんて、割にあわない話だもんな。
注意をしても、田所の勧誘はエスカレートするばかりだったんだ。

それにたまりかねた陸上部の三年連中は、ついに田所を呼び出し、リンチまがいの暴行を加えたのさ。
けれど、田所ってのはいい根性してたんだよ。

どうしたと思う?
1.それを先生に言いつけた
2.陸上部の実態を川口に話した
3.自分が暴行を受けた場面を写真に撮り、それで逆に陸上部を脅迫した