学校であった怖い話
>三話目(荒井昭二)
>C7

友達を呼び出すと、いきなり後ろから襲いかかり、クロロホルムを嗅がせました。
最初の実験のときと同じく、あっさり成功しました。
ただ、これからこのぐったりとしたモルモットを学校の屋上まで運ばなければなりません。

相沢さんは、あらかじめ用意しておいた麻袋にモルモットを押し込むと学校まで担いでいきました。
そして、夜中の学校に忍び込むと、黙って屋上をめざしました。
当然、鍵はかかっています。
ペンチや金づちで鍵を壊すと、ぶわっと吹き込んできた風を全身で受け止めました。

夜の学校がこんなに気持ちいいもんだったなんて。
そんなことを考えながら、思い切り空気を吸い込むと、麻袋をずるずると引きずり出しました。
「……夜の学校は初めてだ」
相沢さんは、麻袋を屋上の一角に放り出すと、しばし夜の屋上から見える夜景を楽しみました。

まるで、自分がこの世の王になったかのような気分でした。
今、この場所から見える人間どもは、いつでも自分の好きな時にその人生に終止符を打たせることができる。
そう思うと、おかしくてなりませんでした。
ひとしきりそんなことを考えた後、いよいよ実験に取りかかりました。

ところが……。
麻袋は空気が抜けたように、ペタンとしているじゃないですか。
夜景に見入っているうちに、意識を取り戻したモルモットに逃げられたのです。
「うあーーーーっ!」
悔しさと悲しみで、相沢さんは叫びました。

見ると、校庭を走っていく蟻のようなものが見えました。
麻袋から逃げ出したモルモットです。
いまさら追いかけても、追いつけそうにはありませんでした。
その時、相沢さんは風に混じって誰かが呼ぶ声を聞いたんです。

ふと下を見ると、大地が誘っていました。
獲物が落ちてくるのを待ち構えて大きな口を開けているような錯覚さえ覚えました。
この下の土は、三人の人間の血をすすったのですから。
血の味を覚えても何ら不思議ではありません。

相沢さんは、柵に手をかけました。
そして、さらに身を乗り出し、待ち構える地面に見入ったのです。
1.飛び下りる
2.思いとどまる


◆二話目で風間が消えている場合
1.飛び下りる
2.思いとどまる