学校であった怖い話
>三話目(荒井昭二)
>V1

◆二話目で風間が消えている場合の始まり方

……何だか、嫌な雰囲気ですね。
話をした人がいなくなってしまうなんて。
もう、岩下さんと風間さんがいなくなってしまった。
……そして、次は僕が話す番ですか。

まずは、自己紹介をしておきましょう。
僕は、二年B組の荒井昭二といいます。
……よろしく。

皆さんは、自殺を見たことありますか?
僕、見たことあるんですよ。
飛び下り自殺。
それも二度も。

一度目は、もう飛び下りてしまったあとでした。
何十メートルもの高さから飛び下りたようで、もう原形はとどめていませんでした。
車にひき殺された犬とか猫の死体が、片付けられずに放置してあることってあるじゃないですか?

見たことありませんか?
あれなんか、まだかわいいほうですよ。
人間だか、肉の塊だか、わからないですからね。

血や肉片なんか、かなりの範囲で飛び散ってましたよ。
見た人は、嫌だ嫌だと顔を背けているのに、みんな、横目で見ていくんですよ。
人間て、変な生き物ですよね。

二度目は、飛び下りた瞬間を目撃したんです。
小さなビルの三階からでした。
何でも痴話喧嘩のもつれだったそうですけど。
女性が飛び下りたんですよね。
本当に死ぬつもりだったのかどうか、わかりませんよ、ああいう類いは。

きっと、相手の男性を脅かすつもりだけだったんでしょうね。
でも、行き掛かり上、引くに引けなくなってしまって……。
そんな感じでした。

飛び下りる瞬間、彼女は鬼のような顔をしてました。
人間て、あんな顔になるものなんですね。
あのとき、初めて知りましたよ。

……彼女は生きてました。
飛び下りて地面に落ちたあと、倒れたまま動かないんですけど、呻き声は聞こえるんですよ。
あの呻き声、僕は絶対に忘れませんよ。
あれほど耳につく声を、僕は聞いたことありませんから。
本当に苦しそうでした。

それで、足から骨が突き出てるんですよ。
血が、思ったほど赤くなくてね。
今思うと、桜色だったような気がします。
僕の目には、そう映りました。
きっと、骨に染みついた血が、そんな色に見せたのかもしれませんね。

それでね、飛び下りると、内臓をやられたりするらしいですよ。
地面にぶつかる瞬間、その衝撃と圧迫に内臓が耐えきれないらしいです。
ですから、もし一命を取り留めたとしても、臓器系統を患ってしまう場合が多いそうですよ。
僕も医者じゃないですから、本当か嘘かはわかりませんけど。

……ところで、飛び下り自殺の音って、どんな音だか知ってます?
地面にたたきつけられる瞬間の音……。
トタン板ってあるじゃないですか。
薄い板で、それが波打っている方のやつです。
あれをね、柔らかい地面の上に置くんですよ。

そして、漬物石のような両手で抱えられるほどの大きさの石を胸の辺りの高さから落とすんです。
その時の音が、人間が地面にたたきつけられる音にそっくりなんだそうですよ。
結構、重くて鈍い音ですよね。
人間の身体って、けっこう柔らかそうじゃないですか。

でも、地面にたたきつけられると、硬い骨が直接当たるようなものらしいんですよね。
実際、僕が見たときは、あんまり鈍い音はしませんでした。
もっと、乾いた音だったような気がします。
もっと高いところから落ちないと、そういう鈍い音はしないのかもしれませんね。

例えば、新校舎の屋上から飛び下りたら、どんな音がするんでしょうね。
四階建ての建物の屋上です。
あの高さから落ちたら、助かるんでしょうか?
それとも、即死でしょうか?

あなただったら、どちらだと思います?
1.即死はしないと思う
2.即死すると思う
3.そんなことわからない