学校であった怖い話
>三話目(福沢玲子)
>H3

あせってない?
本当は好きなんだけれど、心配だから嫌いだなんて答えたんじゃないの?
もう、いまさら嫌いだなんて答えたって遅いんだから。
あなたが花を好きだって話はしっかりと聞かれちゃったんだよ。

誰に?
誰に聞かれたかって?
花の精霊よ。
あ、笑ったでしょ?
そんなものに聞かれたって、少しも怖くないって顔をしてるわよね。

まあ、いいけどさ。
あとで困るのは、どうせ坂上君なんだし。
信じるも信じないもご勝手に…………。

花や木にはね、精霊が宿るんだよ。
特に、樹齢何百年とか何千年っていう木はね。
いろんな歴史を見てるでしょ?
人の生き様とか町並みの移り変わり、とにかくいろんなものを見てるのよ。
人間なんかより、ずっと偉いんだから。

私のこと、馬鹿にしてる?
おかしいとか思ってるでしょ。
花ってね、人間の言葉をわかるんだよ。
言葉だけじゃないよ。
感情までわかっちゃうんだよ。

サボテンを使った実験で、証明されてるんだからね。
サボテンはね、人間の言葉によって成長が早くなったり遅くなったり、より美しい花を咲かしたりするの。
私も、サボちゃん飼ってるよ。
太郎ちゃんと花子ちゃんていう二人のサボテンちゃん。

毎日、話しかけてあげるの。
そうすることが大事なんだからね。
優しく話しかけて、大事に育ててあげると、それだけ立派なサボちゃんになるの。
だからね、逆も言えるんだよ。
なじったり、嫌な光景を見せたり、粗末に扱ったり、乱暴したりすると……植物だって怒るんだよ。

特に、さっきも話した何百年も何千年も生きてきた木なんかは、怒らすと怖いのよ。
精霊が宿っているからね。

それで、坂上君も見たことあるよね?
旧校舎の裏にある一本の大きな桜の木。
なぜか忘れ去られたように、寂しくぽつんとある一本の木。
あの桜って、樹齢千年を越えてるんだって。
だから、あんなに大きいのね。

それで実をいうとね、新校舎の裏にある第二運動場は、あそこにできるはずだったんだって。
けどね、あの桜の木があるから、だめだったのよ。
どうしてかわかる?
あの桜をね、切ったり掘り出そうとすると、事故が起きるんだって。
工事中に三人も死んだらしいよ。

木を切り倒そうとした一人は、鉄骨に押し潰されて圧死。
掘り出そうとした二人は、それぞれ原因不明の発熱で一週間苦しみながら生死の境をさ迷った末に死亡。
誰も、手を出すことができないんだよ。

他の場所に移すのも、だめなんだってさ。
お祓いをやろうが、何をしようが全然だめなんだって。
怖いでしょ。
1.怖い
2.怖くない