学校であった怖い話
>四話目(細田友晴)
>C8

「本当に感じるんですか? どうしよう? 僕も一緒にトイレに入った方がいいんだよね」
細田さんが、なにかもじもじしているようだ。
「どうしたんですか? 細田さん」
僕は、彼に聞いた。

「坂上君、本当に霊を感じるんだろう? なんか、僕もここからものすごく霊を感じているんだ。やっぱり、部室に戻った方がいいかもしれない。悪いことはいわないよ、坂上君」

なんだ、トイレツアーに行こうっていったのは自分じゃないか……。
今まで、僕が霊を感じないっていったら、あんなに残念がっていたのに……。

でも、細田さんの様子が確かに変だ。
なにかに、怯えているように……。
細田さんを、ちょっとからかってやろうかな。
「ああっ!!」
「どうかしましたか!?」
細田さんが焦っている。

「ちょっと、待って下さい。……僕、急にトイレに行きたくなちゃって」
ははは、細田さんがホッとしているのがわかる。
「じゃあ、僕たちは先に新聞部へ戻っているからね。用足しが終わったら、すぐ戻ってくるんだよ。約束だよ」

細田さんは、心配性だな。
「大丈夫ですよ。すぐ、戻りますから」
僕の返事を聞くと、細田さんたちは新聞部へと戻っていった。
おっと、本当に尿意をもよおしてきたらしい。

僕は、トイレに飛び込んだ。
中から、ムッとしたアンモニアの臭いが鼻をつく。
学校のトイレは臭い。
息を止め、僕は早く用を足すことにした。
一番手前の便器に行き、チャックを下ろす。
……あー、気持ちいい。

おや?
後ろで音が聞こえる。
何だろう。
僕は、後ろを振り向いた。
……けれど、誰もいない。
風の音かもしれない。
それとも、錯覚か。
僕はそう思って、手を洗おうとした。

まただ。
また、音がする。
変だ。
錯覚じゃない。
僕は、もう一度振り向いた。
……そして、音がするのを待った。

聞き間違いじゃない。
確かに音が聞こえる。
右から二番目の個室の中から。
中に誰か入っていないかどうか確かめるのに、外からドアをたたくのはよくあることだ。

けれど、個室の中から音が聞こえてくるなんて……。
何だろう。
何で、あんな音が聞こえてくるんだろう。

絶対に錯覚じゃない。
確かに聞こえる。
僕は、何かに誘われるように音がするドアの前に立った。
誰かが、いたずらでたたいているのだろうか。

僕は、全身が震えているのがよくわかった。
歯の噛み合う音が、自分でもよく聞こえるほどだ。
この中に誰かいる?
霊気を感じるというのは、こういうことをいうのだろうか?

僕は、そっとノブに手を伸ばした。
どうする?
開けるか?
それとも逃げ出すか?
1.開ける
2.開けないでこのまま様子をみる
3.逃げ出す