学校であった怖い話
>四話目(細田友晴)
>J9

……そうか。
仕方ないな。
じゃあ、帰ろうか。
これ以上、先輩たちを引き回しても悪いしさ。
新聞部に戻って話を続けよう。

「ちょっと待ってください。……僕、急にトイレに行きたくなっちゃって」
「あ、そう。じゃあ、僕たち新聞部に戻っているから、あとで来てよ」
そういうと、細田さんたちは、新聞部へ戻っていった。

細田さんは、まだ不思議そうに首を傾げていた。
僕が何も感じなかったことが、そんなに不思議なんだろうか。
……おっと、そんなことを考えている暇はない。

僕は、トイレに飛び込んだ。
中から、ムッとしたアンモニアの臭いが鼻をつく。
学校のトイレは臭い。
息を止め、僕は早く用を足すことにした。
一番手前の便器に行き、チャックを下ろす。
……あー、気持ちいい。

おや?
後ろで音が聞こえる。
何だろう。
僕は、後ろを振り向いた。
……けれど、誰もいない。
風の音かもしれない。
それとも、錯覚か。
僕はそう思って、手を洗おうとした。

まただ。
また、音がする。
変だ。
錯覚じゃない。
僕は、もう一度振り向いた。
……そして、音がするのを待った。

聞き間違いじゃない。
確かに音が聞こえる。
右から二番目の個室の中から。
中に誰か入っていないかどうか確かめるのに、外からドアをたたくのはよくあることだ。

けれど、個室の中から音が聞こえてくるなんて……。
何だろう。
何で、あんな音が聞こえてくるんだろう。

絶対に錯覚じゃない。
確かに聞こえる。
僕は、何かに誘われるように音がするドアの前に立った。
誰かが、いたずらでたたいているのだろうか。

僕は、全身が震えているのがよくわかった。
歯の噛み合う音が、自分でもよく聞こえるほどだ。
この中に誰かいる?
霊気を感じるというのは、こういうことをいうのだろうか?

僕は、そっとノブに手を伸ばした。
どうする?
開けるか?
それとも逃げ出すか?
1.開ける
2.開けないでこのまま様子をみる
3.逃げ出す