学校であった怖い話
>四話目(福沢玲子)
>L2

ふうん、知らないんだ?
あの階段って、いろんなバリエーションの話があるし、けっこう有名なんだけどなあ。

上るときに数えると十四段なのに下りるときに数えたら十三段だったとかさ。
でもさ、階段を数えるのって間違ったりしない?
一番上の段って数えるのか、数えちゃいけないのか?
迷ったことってない?

まあ、あれは階段じゃないからさ。
床だからさ。
段数には入れないんだけどね。
だから、階段の段数っていうのは、床と床の間に挟まれた部分だけを数えるんだよ。
勉強になった?
あはははは……。
それとも、そんなことぐらい知ってたかな。

……ごめん、ごめん。
それで、旧校舎の十三階段の話。
十三日の金曜日じゃなくても、確かめる方法があるんだよ。
私、知ってるんだ。
日めくりカレンダーってあるでしょ。
あれをね、十三日の金曜日にしておくの。
そしてね、噂の十三階段の壁に掛

けておくんだよ。

そうするとね、同じことが起きるんだってさ。
でもね、それだとやっぱり効力が弱いのかなあ。
そうとう霊感のある人でないと、十三階段にならないんだってさ。
でも、なったらなったでやだよね。
「やったあ! 十三階段だよ!」
っていっても、結局は悪いことしかおきないんだもんね。

だけどさあ、興味あるじゃん。
そういう噂って、何だかとっても試したくならない?
うふふ……。
私、試しちゃったんだ。

もちろん、一人でじゃないよ。
三人でだよ。
一人なんてやだよ。
絶対、怖いもん。
私のクラスの子。
元木早苗ちゃんていう子と、染谷洋子ちゃん。

二人とも変な子でさあ。
ちょっと、普通じゃないのよね。
まあ、洋子ちゃんの場合、早苗ちゃんほど変じゃないけど。
まったく、早苗ちゃんてば、すごい変な子なんだよ。
……あ、今は関係ないよね。

早苗ちゃんがどれくらい変な子かって話は、別の機会にしてあげるね。
実は、その日めくりカレンダーの話だって、早苗ちゃんがしてくれたんだよ。
特別な情報提供者がいるからね、彼女には。
それでね、三人でいったの。

旧校舎に、確かめにさ。
あれ、いつだっけかな。
確か、先月の十三日……そう、十三日。
金曜日じゃなかったから、日めくりカレンダーを持ってったの。

せめて日にちぐらい同じ方が、確かめやすいだろうってさ。
それで、何も起きなかったら、本当の十三日の金曜日にもう一度行くつもりだったんだけどね。

それでさ、放課後、立ち入り禁止の旧校舎に忍び込んだわけ。
好奇心旺盛な女の子としては、ちょっとした冒険気分を味わいたいのよね。
けっこう、ドキドキしたわ。
私、旧校舎って入るの初めてだったんだもん。
旧校舎って、怖いね。
昼間だってすごく怖いんだから。

私たちは、怖い体験をしに行ったわけでしょ。
だから、心構えも違うのよ。
最初から、怖いことが起きるぞ、怖いことが起きるぞって思い込んでるからさ。
別に普通の旧校舎でも、ゾクゾクしてくるのよ。
古い木の臭いも、何かいや〜な腐った臭いに思えるし。

柱に彫ってあるいたずら書きも、妙に怖く思えたりしてね。
シーンと静まり返っているから、それだけで何かがいるように思えちゃうの。
やっぱりさ、その時の心理状況って、大事よね。

あれが、すごく楽しいこととかをしに行ってたら、ちっとも怖くなくて古い木の臭いが懐かしかったり、いたずら書きがおもしろかったり、別のことを考えちゃうよ、きっと。
ところでさあ、坂上君。

あなた、旧校舎には行ったことある?
1.ある
2.ない