学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>J7

ヤツは学校を休んで、隣町に行ったんだ。
その頃は、縁日の時期でさ。
大倉以外にも、ずる休みして遊びに行ってた生徒がいたぜ。
かくいう俺も、その一人。

縁日は夜もやってるけど、遊びなんて少しはルールから外れなきゃおもしろくねえだろ。
誰と行ったかは、想像に任せるけどよ。
とにかく、大倉を見かけたときは驚いた。

声をかけようかと思ったけど、ヤツの顔があまりにも深刻でさ。
つい、後をつけた。
そしたら、一軒の出店で立ち止まるんだ。
けばけばしい色の、プラスチックのままごと道具なんか売ってる、小さな出店。
そこの親父と、何か交渉してたな。

そしたら、親父が一組のカードを出した。
トランプよりもでかくて、派手な絵が描いてあるカードだった。

「タロットカードよ」
俺は知らなかったけど、連れがそういってたぜ。
それを見た途端、大倉は手を伸ばした。
でも、それより早く親父が手を引っ込めた。

大倉のヤツ、お預けを食らった犬のようだったな。
それで親父に何かいわれて、あきらめたようにトボトボと歩き出したんだ。
俺は、ヤツを追いかけた。
人気のない神社の境内で追いついて、声をかけた。
大倉は驚いたように振り向いて……俺を見て嬉しそうに笑った。

奇妙な笑顔だったぜ。
それで、オゴッてやるから遊びに行こうなんていうんだ。
どうせ暇だし、行ってもいいかと思ってさ。
でも、さっきの笑顔が気になって、もう一度大倉を見たんだ。
ヤツはナイフを振り上げてた。

血走った目は、俺をにらみつけてた。
「やめろっ!!」
俺はとっさに、大倉を突き飛ばしていた。

「ぎゃっ!」
倒れ方が悪かったのか、ナイフは大倉の腹に突き刺さっちまった。
そのとき、突然背後で声がしたんだ。
「おやおや、失敗したんだね」
振り向くと、さっきの出店の親父がいた。

薄笑いを浮かべて、大倉を見下ろしてる。
「でも、誰のものでも魂に違いはないんだし……このタロットの代金には充分だよ」
親父はカードを見せびらかすように振った。
大倉はくやしそうにそれを見ていたけど、もう手を伸ばす気力さえないのさ。

「せっかく売るといっているのに、それでは使えそうにないね。そっちの友達の方はどうかな? 思うままに操れるタロットカードはいかが。今なら、大倉君の魂と引き替えでいいよ」
親父は、そういって俺を見た。

思うままに操れるタロットカード。
大倉のトランプは、それの仲間だったんだ。
おまえなら、こんなときどうする?
1.断る
2.もらう