学校であった怖い話
>五話目(荒井昭二)
>C7

普通は、そう思うでしょ。
そうですね、その自主制作の作品に携わった人が死んでしまった場合は、思わず考えてしまうのもわかります。
彼も、念願の映画研究同好会を作って、やっと作品を作れるまでになったのに、とても残念がりました。

彼は情に厚い人間だったのでフィルムの編集作業を断念することにしたんです。
それ以外に、殺された人間が映っている映画を、編集することにも抵抗がありましたしね。

翌日、彼は例のフィルムを保管するために、部室を兼ねている視聴覚室へ行きました。

すると、あのフィルムが編集をしてくださいといわんばかりに、編集機器にセッティングしてあったんです。
しばらく彼は、そこから動けませんでした。
「視聴覚室に最後に入ったのは、先週の土曜日だった。その時は、編集機材は全部片づけたはずなのに……」

だって、この部屋の鍵を持っているのは、先生と彼だけなんですから……。
先生は、そんなことをするわけはないでしょうし。
でも、彼はいいほうに考えました。
きっと、これは無念の最期を遂げた彼が、作品を仕上げてくれと僕に訴えているんだと……。

彼自身も、途中で編集をやめなければいけなくなったことに、かなりの未練があったのは確かです。

そう思うと、何より先に編集を続けたくなってしまったんです。
そして、その日見たフィルムにはもっと変なものが映っていたんですよ。
それは、主人公の組織のボスを倒すために、何人もの刺客を倒していくというシーンでした。
かっこよく、次々と刺客を殴り殺していく主人公。

よりリアルに死んでいく刺客たち。
もう、彼はごきげんです。
次々と、主人公が刺客を倒していくシーンを見る度に、彼もガッツポーズをする。
そして、主人公が最後のボスを倒すシーンです。
主人公の決め手のこぶしが、ボスの腹部に炸裂しようとした瞬間……。

相手は主人公のこぶしを避けて、パンチを繰り出したんです。
時田君は、目を疑いました。
「そんな……。これは、違う!」
最初っから、こんなによく撮れているはずがないのだから、それ自体が違うと僕は思うんですけどね。

時田君は、自分の見間違いかもしれないと思ってもう一度見直そうとしたんです。
坂上君だったら見直すかい?
1.見直す
2.見ない