学校であった怖い話
>五話目(岩下明美)
>C9

そうよ、彼女は電話を切ったの。
でも、そんなことするべきじゃなかった。
だって、そのせいでとんでもないことが起きたんですもの。

そういって岩下さんは僕を見た。
「どんなことだか、教えてほしい?」
「え……ええ、そりゃあもちろん」
僕がうなづくと、岩下さんは立ち上がった。
「坂上君の頼みなら聞いてあげる。
でも、その代わりキスしてちょうだい」

耳を疑った。
キスだって?
しかも、今ここで!?
「冗談じゃないわ。本気よ」
岩下さんは正気なんだろうか?
僕をまっすぐ見つめている。
他の人も、呆気にとられているようだ。

「キスしないと、話してあげないわよ」
脅迫のように、岩下さんがいいつのる。
席を立って、僕の側まで来た。
「私、坂上君のことが好きなの。今すぐキスして。新聞部の企画に協力してあげるんだから、そのくらいいいでしょ」

恩着せがましいいい方。
僕は、少しムッとした。
でも、岩下さんはそんなことお構いなしだ。
「キスしてってば! 七不思議が完成しなくてもいいの!?」

僕の腕をつかんだ。
とっさに振り払う。
岩下さんはバランスを崩して、倒れ込んだ。

ガツッという嫌な音。
岩下さんが、机の角に頭をぶつけた音だ。
倒れた彼女に、あわてて駆け寄る。

机の角には、ベッタリと真っ赤な血がついている。
「岩下さん!」
固く目を閉じている。
まさか、死んでしまったなんてことは!?
そんなつもりはなかったのに……。

そのとき、彼女の目がカッと開いた。
青いくちびるから、スウッと血が流れる。
しわがれた声が漏れた。

「私に恥をかかせたわね……許さない。あんたを呪ってやるわ……!」
激しいめまいが僕を襲った。

数秒後、僕は自分が元の位置に座っているのに気づいた。
岩下さんも、ちゃんと席に着いている。
今のはなんだったんだ?
白昼夢か……?
そう考えていた僕は、岩下さんのセリフに凍りついた。

「それじゃあ、五話目は私が話すのね」

(話の最初に戻り、無限ループに入る)