学校であった怖い話
>五話目(岩下明美)
>K5

矢口さんは思ったわ。
自分は悪くない。
間違っているのは、伊達君のほうだと。
だから、謝るなら伊達君から……と思ったのね。
でも、それがわかっていたように、九時になると同時に電話のベルが鳴ったの。

彼女はすぐ受話器を取った。
やっぱり伊達君がかけてきてくれた。
そう思ったら、さっきまでの決心も忘れていたわ。

「ごめんなさい。私がちゃんと説明しなかったから……」
相手も確かめずに、そういいかけたの。
そのとき、受話器の向こうでクスッという笑い声が聞こえたのよ。
ハッと身を固くする矢口さんに、その声は話しかけてきたわ。

「伊達君は浮気者のあなたなんて、もう嫌いだって。電話もしないでほしいっていってたわよ」
知らない女の人の声。
「あなた誰!?」
「伊達君の新しい恋人よ。私はあなたと違って、伊達君のご両親に嫌われてないの」

声は、矢口さんをあざ笑った。
矢口さんはたまらなくなって、受話器をたたきつけたの。

伊達君に限って、一度の誤解で浮気するような、そんなことするはずがない。
そう思うけど、不安はおさまらないの。

だから、次の日会ったとき、いきなり食ってかかったわ。
「昨日の女の人、誰なの!?」
でも、伊達君は反対に怒りだしたの。
「なんだよ、それ!? ごまかそうとしたって駄目だぜ。おまえこそ、新しい恋人ができたんだろう!!」

矢口さんはびっくりしたわ。
それで、一度冷静になって話し合ってみることにしたのよ。
すると、信じられないことがわかった。

二人の電話は、邪魔されていたのよ。
それも、伊達君をかたる男と、伊達君の恋人をかたる女の二人にね。
「なんて奴だ。絶対に見つけ出してぶっとばしてやる!」

伊達君は、決してむやみに暴力を振るうような人ではなかった。
けれど、愛する矢口さんを苦しめた男たちを許せなかったのね。

でも、矢口さんにとっては、それはどうでもいいことだった。
ただ、いつもの優しい伊達君が戻ってくれればそれでよかった。
そして、今夜こそ、二人で電話をすることに決めたの。

「ねえ、今日は私から電話するわ。
だから、絶対に電話をかけてこないで。そうすれば、間違いなくあなたにかかるでしょ?」
矢口さんの言葉を聞いても、まだ伊達君は不安そうだったわ。

伊達君の名を騙る男が、どんな手を使うかわからない。
そして、また矢口さんが騙されてしまうかもしれない。
それで、念には念を押すことにしたの。

「そうだ。今度はそいつが邪魔できないように、何か方法を考えようよ。どうも、そいつは僕たちの仲を妬んでいるようだからさ」
伊達君の提案に、矢口さんも賛成だった。

……ねえ、坂上君。
あなただったら、どうする?
1.電話の時間をずらす
2.一度呼び出し音が鳴ったらすぐ切り、もう一度かけ直す
3.最初は親に電話に出てもらう