学校であった怖い話
>五話目(岩下明美)
>Q6

矢口さんは思ったわ。
自分は悪くない。
間違っているのは、伊達君のほうだと。

……でもね、自分から謝ることにしたの。
だって、このままケンカが続くのは嫌だったから。
そして、九時になると同時に、手を受話器に伸ばしたの。

その時だった。
電話が鳴ったのよ。
彼女は思わず受話器を取った。

そして、相手も確かめずに早口でいったの。
「ごめんなさい。私がちゃんと説明しなかったから……」
「悪いのは俺のほうだよ。あんなに怒鳴っちゃって、悪かったよ。俺、反省してるんだ」

でも、素直に謝られて、逆に矢口さんは不安になったわ。
そして、尋ねたの。
「……ねえ、あなた、伊達君?」

受話器から笑い声が聞こえたわ。
「あっはっは……何を言い出すんだよ。俺の声、忘れちまったのか?」
その笑い声は、確かに伊達君の声だった。
いつもと変わらない、伊達君の声。

矢口さんは、ほっとしたわ。
そして、その晩も夜中まで話したの。

一度でも不安になると、それを乗り越えたあとの絆はより深くなるものよ。
知っておくといいわ、坂上君。
ふふふ……。
でも、次の日。

通学路の途中で会った伊達君は、昨日以上に冷たかった。
というよりも、乱暴だったわ。
矢口さんが、伊達君と目があうと、その日は向こうから近づいてきた。
でも、顔はムスッとしていて、とても怒っている様子だった。

そして、近づくなり怒鳴り散らしたのよ。
「俺のことが嫌なら嫌って、はっきりいえよ。新しい彼氏ができたんだろ!」

矢口さんは、またも面食らった。
そして、伊達君の荒々しい言葉にどう反応していいかわからなくなって、とうとう泣き出してしまったの。
まさか矢口さんが泣くとは思わなかったから伊達君はおろおろしたわ。

そして、冷静さを取り戻して謝り始めたの。
それで、二人はようやく落ち着いて話すことができた。
そして、知ったわ。
伊達君の名前を騙る存在がいることをね。

「なんて奴だ。絶対に見つけ出してぶっとばしてやる!」
伊達君は、決してむやみに暴力を振るうような人ではなかった。
けれど、愛する矢口さんを苦しめる男を許せなかったのね。

でも、矢口さんにとっては、それはどうでもいいことだった。
ただ、いつもの優しい伊達君が戻ってくれればそれでよかった。
そして、今夜こそ、二人で電話をすることに決めたの。

「ねえ、今日は私から電話するわ。
だから、絶対に電話をかけてこないで。そうすれば、間違いなくあなたにかかるでしょ?」
矢口さんの言葉を聞いても、まだ伊達君は不安そうだったわ。

伊達君の名を騙る男が、どんな手を使うかわからない。
そして、また矢口さんが騙されてしまうかもしれない。
それで、念には念を押すことにしたの。

「そうだ。今度はそいつが邪魔できないように、何か方法を考えようよ。どうも、そいつは僕たちの仲を妬んでいるようだからさ」
伊達君の提案に、矢口さんも賛成だった。

……ねえ、坂上君。
あなただったら、どうする?
1.電話の時間をずらす
2.一度呼び出し音が鳴ったらすぐ切り、もう一度かけ直す
3.最初は親に電話に出てもらう