学校であった怖い話
>五話目(岩下明美)
>AA6

矢口さんは思ったわ。
自分は悪くない。
間違っているのは、伊達君のほうだと。
だから、謝るなら伊達君から……と思ったのね。
でも、それがわかっていたように、九時になると同時に電話のベルが鳴ったの。

彼女はすぐ受話器を取った。
やっぱり伊達君がかけてきてくれた。
そう思ったら、さっきまでの決心も忘れていたわ。

「ごめんなさい。私がちゃんと説明しなかったから……」
相手も確かめずに、そういいかけたの。
そのとき、受話器の向こうでクスッという笑い声が聞こえたのよ。
ハッと身を固くする矢口さんに、その声は話しかけてきたわ。

「伊達君は浮気者のあなたなんて、もう嫌いだって。電話もしないでほしいっていってたわよ」
知らない女の人の声。
「あなた誰!?」
「伊達君の新しい恋人よ。私はあなたと違って、伊達君のご両親に嫌われてないの」

声は、矢口さんをあざ笑った。
矢口さんはたまらなくなって、受話器をたたきつけたの。

伊達君に限って、一度の誤解で浮気するような、そんなことするはずがない。
そう思うけど、不安はおさまらないの。

だから、次の日会ったとき、いきなり食ってかかったわ。
「昨日の女の人、誰なの!?」
でも、伊達君は反対に怒りだしたの。
「なんだよ、それ!? ごまかそうとしたって駄目だぜ。おまえこそ、新しい恋人ができたんだろう!!」

矢口さんはびっくりしたわ。
それで、一度冷静になって話し合ってみることにしたのよ。
すると、信じられないことがわかった。

二人の電話は、邪魔されていたのよ。
それも、伊達君をかたる男と、伊達君の恋人をかたる女の二人にね。
「なんて奴だ。絶対に見つけ出してぶっとばしてやる!」

伊達君は、決してむやみに暴力を振るうような人ではなかった。
けれど、愛する矢口さんを苦しめた男たちを許せなかったのね。

でも、矢口さんにとっては、それはどうでもいいことだった。
ただ、いつもの優しい伊達君が戻ってくれればそれでよかった。
そして、今夜こそ、二人で電話をすることに決めたの。

「ねえ、今日は私から電話するわ。
だから、絶対に電話をかけてこないで。そうすれば、間違いなくあなたにかかるでしょ?」
矢口さんの言葉を聞いても、まだ伊達君は不安そうだったわ。

伊達君の名を騙る男が、どんな手を使うかわからない。
そして、また矢口さんが騙されてしまうかもしれない。
それで、念には念を押すことにしたの。

「そうだ。今度はそいつが邪魔できないように、何か方法を考えようよ。どうも、そいつは僕たちの仲を妬んでいるようだからさ」
伊達君の提案に、矢口さんも賛成だった。

……ねえ、坂上君。
あなただったら、どうする?
1.電話の時間をずらす
2.一度呼び出し音が鳴ったらすぐ切り、もう一度かけ直す
3.最初は親に電話に出てもらう