学校であった怖い話
>六話目(新堂誠)
>D4

何嫌がってるんだよ。
じゃあ、この本の呪いについて話してやるよ。
いいか、坂上。
驚くなよ。
この本にかかっているのはな、女を口説きまくるという呪いなんだ。

まず、この本を左手で持ち、頭の中で炎を思い浮かべる。
愛からイメージする炎をな。
そうすると、女をうまく口説けるという、おいしい呪いがかかってしまうのさ。

……嘘じゃないぜ。
実際試した奴がいるんだよ。
うちの学校の生徒なんだがな。
奴は顔もいいし、もともともてない方じゃなかった。

だが、どうしても口説き落とせない女がいたんだよ。
……どんな女だと思う?
ふふ、女教師さ。
新任の、色っぽい先生なんだけどな。
奴はその女を口説く為に、呪いの本を利用したのさ。

奴は本を左手に持ち、愛の炎を思い浮かべた。
すると……。
頭の中に、色々なイメージが浮かぶじゃないか。
イメージというか……。
インスピレーションだな。

女が喜ぶような、愛の言葉が次々と思い浮かんだんだよ。
言葉の洪水さ。
それで、奴は女教師を放課後呼び寄せ、甘い言葉で誘惑したのさ。

……坂上。
お前、顔が赤いぞ。
この本に、興味がわいてきたんだろう。
話はまだ続くぜ。

……女教師は、すぐに奴の手におちた。
奴の口説きに、メロメロになっちまったんだよ。
それで、頼みもしないのに、お弁当をこっそり作ってきたりしてな。
色々つくしてくれたわけだ。

もちろん、二人が付き合っていたことは秘密さ。
ばれないだろうかという緊張感。
これがあるのとないのとでは、随分違うんだよな。
燃えるんだよなあ。
そういう時ってよ。

……坂上。
どうだ?
随分いい話だと思わないか?
まあ、この本にかかっているのは……。
呪いというより、一種の魔術だよな。

ほら、よくあるだろう?
時代の権力者を、女が誘惑して惑わせる……。
そういう時に、使われていた本らしいんだよ。
だから、この本を女が使えば、男を手玉にとれるってわけだ。
……恐ろしい話じゃないか。
ははは。

………。
おい、坂上。
試してみないか?
おいしい思いを、してみろよ……。
1.試す
2.やめておく